表示基準・表示事項解説

日本のワインの表示は、「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」や、「食品表示基準」などの法令によるもののほか、ワイン業界や酒類業団体が定めた基準により行われています。

法令による表示

「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律第86条の5(酒類の品目等の表示義務)」では、全ての酒類に表示する基本的な表示事項が定められています。
その内容は、製造者の氏名又は名称、製造場の所在地、容器の容量、酒類の品目、発泡性を有する旨及び税率適用区分、アルコール分などの表示です。
 ワインの表示に関しては、平成27年10月30日、国税庁が「同法第86条の6(酒類の表示の基準)」に基づき、「果実酒等の製法品質表示基準(国税庁告示)」を制定しました。
背景として、国内における酒類消費が横ばいの中、ワインは近年消費が拡大している成長産業であること、特に国産ぶどう100%を原料とする「日本ワイン」の中には海外で高い評価を受ける高品質なものが出てきていることから、日本ワインとその他のワインを明確に区別し、日本ワインには産地・品種・年号等の表示ができるようにするものです。
基準の適用は、制定から3年後の平成30年10月30日となります。
概要は次のとおりです。

国税庁基準における「日本ワイン」とその他のワインの位置付け

 

日本ワインの「地名」「ぶどう品種」「年号」の表示の要件は次のとおりです。

地名 ワインの産地名(塩尻ワイン 等) 当該地で収穫したぶどうを85%以上使用し、当該地で醸造した場合
ぶどうの収穫地名(塩尻産ぶどう使用 等) 当該地で収穫したぶどうを85%以上使用した場合
醸造地名(塩尻醸造ワイン 等) 当該地に醸造地がある場合
ぶどう品種 単一品種の表示 単一品種を85%以上使用している場合
二品種の表示 二品種合計で85%以上使用し、かつ量の多い順に表示する場合
三品種以上の表示 表示する品種の合計が85%以上であり、各品種の使用量を表示し、かつ量の多い順に表示する場合
ぶどう収穫年 同一収穫年のぶどうを85%以上使用している場合

 

ラベルの表示例


1 日本ワインのラベルの読み方(PDF)
2 輸入原料使用ワインのラベルの読み方(PDF)
 

その他の法令による表示


法令による表示は、この果実酒の表示基準のほかに、国税庁が定める未成年者の飲酒防止基準、地理的表示に関する基準、有機(オーガニック)の表示基準があります。
また、食品表示基準では、炭酸ガスや酸化防止剤(亜硫酸塩)などの添加物の表示等について規定しています。
詳細は次の国税庁ウェブサイトをご覧ください。

 

(国税庁ウェブサイトへリンクします)

ワイン業界の自主基準による表示

「国産ワインの表示に関する基準」は、昭和61年(1986年)に全国5つのワイン製造者団体で構成する「ワイン表示問題検討協議会※」が制定した自主基準です。
※ 道産ワイン懇談会(現 北海道ワイナリー協会)、山形県ワイン酒造組合、山梨県ワイン酒造組合、長野県ワイン協会、日本ワイナリー協会で構成
この基準は、日本ワインの品質が著しく向上していること、日本ワインコンクールの定着により日本ワインに対する消費者の支持や関心が一段と高まってきたことなどを背景に、平成18年(2006年)に消費者の視点や国際ルールとの整合性に配慮した改正を行いました。
その後、日本ワインを際立たせるような表示や、ワイン産地形成に向けた表示方法の検討を重ねていたところ、上記のとおり、平成27年(2015年)10月に国税庁の「果実酒等の製法品質表示基準」が制定され、業界自主基準で定めていた産地・品種・年号などの主要な表示ルールが国税庁基準の中に取り込まれました。
これを受け、ワイン表示問題検討協議会は、それまで業界自主基準で定めていた表示事項のうち、国税庁基準の中に規定されたものを削除し、国税庁基準で定めていない特定用語(シャトーやシュールリー等)などの規定について整理するなど、基準の全般的な見直しを行いました。
現行自主基準の概要は次のとおりです。

         

適用範囲 ぶどうを原料の全部又は一部としたワインで、日本国内において製造され、日本国内において消費されるワイン。
特定の用語の使用基準 以下の用語を表示する場合の要件を規定
(1)貴腐ワイン・貴腐
(2)氷果ワイン・アイスワイン
(3)クリオエキストラクション
(4)冷凍果汁仕込
(5)シュールリー
(6)シャトー、ドメーヌ
(7)エステート
(8)元詰、○○元詰
(9)樽発酵、樽熟成、樽貯蔵
(10)無添加
(11)限定醸造
説明表示
表示禁止事項
表示上の注意事項
商品に対する説明表示の規定。国際協定等により保護されている用語、消費者が誤認する可能性のある用語等の表示の禁止規定、社会通念上好ましくない表示に対する表示上の注意事項の規定
基準の運営 この自主基準を円滑に運用するための規定

 

妊産婦の飲酒に対する注意表示

平成16年5月、日本ワイナリー協会では、妊産婦の飲酒に対する社会的な懸念の高まりに配慮し、自主的に製品本体へ注意表示を行うこととしました。
平成16年6月には、酒類業界の全ての組合が注意表示を実施することを表明するに至りました。
更に、平成18年5月には、酒類業界で定めている「酒類の広告宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」にも妊産婦の飲酒に対する注意表示が追加規定されました。
表示の内容は次のとおりです。

表示内容 「妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。」
その他 表示を省略できる容器及び文字の大きさ等は、平成元年国税庁告示第9号「未成年者の飲酒防止に関する表示基準」に準拠する。

酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準

この基準は、酒類業9団体で構成する「飲酒に関する連絡協議会※」の自主基準です。
20歳未満の飲酒の防止などの社会的要請に応えるとともに、消費者利益の一層の確保と酒類産業の健全な発展を期する観点から、「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」を定め、広告宣伝・酒類容器の表示や表現等の制限を行っております。
※ 日本酒造組合中央会、日本蒸留酒酒造組合、ビール酒造組合、日本洋酒酒造組合、全国卸売酒販組合中央会、全国小売酒販組合中央会、日本洋酒輸入協会、全国地ビール醸造者協議会、日本ワイナリー協会で構成
基準の概要は次のとおりです。

広告宣伝関係
  1. 広告宣伝を行う際には、「飲酒は20歳を過ぎてから」、「妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります」、「お酒は適量を」、「飲酒運転は法律で禁止されています」、「空き缶はリサイクル」などの注意表示を行う。
  2. テレビ、ラジオについては、視聴者の70%以上が20歳以上であることを確認した番組に広告を行うよう配慮する。
  3. 20歳未満の飲酒を推奨、連想、誘引する表現は行わない。
  4. 20歳未満を対象としたテレビ番組、ラジオ番組、新聞、雑誌、インターネット、チラシには広告を行わない。
  5. 20歳未満又は20歳未満にアピールするキャラクター、タレントを広告のモデルに使用しない。
  6. 公共交通機関には、車体広告、車内独占広告等を行わない。
  7. 小学校、中学校、高等学校の周辺100m以内に、屋外の張替式大型商品広告板を設置しない。
  8. 過度の飲酒につながる表現、飲酒運転につながる表現、「イッキ飲み」等飲酒の無理強いにつながる表現、飲酒への依存を誘発する表現、スポーツ時や入浴時の飲酒を誘発する表現等を行わない。
  9. 次の時間帯にはテレビ広告を行わない。
    5時00分から18時00分まで
    ただし、企業広告及びマナー広告(※)は除く。
※ 商品の表示、飲酒シーン(注ぐ、嗅ぐなどの描写を含む。)は禁止
酒類容器関係
  1. 法令に従い、20歳未満の飲酒防止に関する注意表示を行う。
  2. 2.0リットル超の容器に「妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。」、「お酒は適量を」、「空き缶はリサイクル」などの注意表示を行う。 なお、2.0リットル以下の容器には、上記注意表示のうち1項目以上を表示する。
  3. (1)缶容器、(2)300ミリリットル以下の容器に入っているアルコール分10度未満の酒類には酒マークを表示する。
ノンアルコール飲料関係 アルコール度数0.00%で、味わいが酒類に類似しており、20歳以上の飲用を想定・推奨している飲料をノンアルコール飲料と定義し、その広告宣伝・容器の表示・店頭への陳列について規定する。


基準の詳細はこちらをご覧ください。

なお、この基準の遵守・実施状況等を中立・公正な立場から審議し、その審議結果を「飲酒に関する連絡協議会」に報告することを目的とする第三者機関の「酒類の広告審査委員会」があります。
この委員会のウェブサイトはこちらをご覧ください。