【第2回】 未来を切り拓くワイン技術者のオーストラリア研修記

シャトー・メルシャン 製造部製造課
牧野 修治

ワイン・フロンティアリーダー養成プログラムのアデレード研修で訪問したワイナリーの1つに、Adelaide Hillsにワイナリーを所有するShaw and Smith Wineryがあります。オーストラリアで初めてワイン業界で最高峰の資格「マスター・オブ・ワイン」を取得したMichael Hill Smithをオーナーの1人とするワイナリーです。
醸造量は確か600トン程、ソービニヨン・ブラン、リースリング、シャルドネ、ピノ・ノワール、シラーズの5品種のみのワインをShaw and Smithのラベルで市場に出しています。最低限の設備で醸造を行い、“シンプルさ”をモットーとしたシルキーで繊細なワインを造っています。
2000年のワイナリー改修から、発酵で生じる二酸化炭素によって果皮や果肉が果醪上部に浮上したいわゆる果帽から色素や糖分などの成分をゆっくりと抽出するために機械式のプランジ(櫂入れ機)を導入し、そのデリケートな醸しがピノ・ノワールとシラーに活かされています。シャルドネはとても洗練された樽の使い方が印象的でどこか日本ワインに共通点を持つような懐かしさを彷彿させるワインでした。

140年以上の歴史を持つ家族経営ワイナリーのHenschkeも訪問しました。
1860年代に植えられた古木のシラーをベースとしたカルトワインの”Hill of Grace”が著名なワイナリーですが、テイスティングしたJulius Riesling 2015にも感銘を覚えました。これはワイナリーのあるEden Valleyのリースリングを100%原料としたワインです。pH 2.97、アルコールも11.5%と穏やかでありながら果実味に富み、長い余韻をもたらすリースリングでした。日本のリースリングもこのJulius Rieslingのように酸味が特出するようなワインが多いと思っていますが、果実味とのバランスやテクスチャーなどの優れた要素があり、とても手本となるリースリングだと感じました。

著者について

シャトー・メルシャン製造部製造課
牧野 修治

ワインメーカーの登竜門とされ世界でも屈指の栽培醸造学科カリフォルニア大学デイヴィス校ブドウ栽培醸造学科を2009年に卒業。
2012年4月にメルシャン株式会社シャトー・メルシャン勝沼ワイナリーに勤務。