【第3回】 日々、田舎のワイナリーで
日々、田舎のワイナリーで2016年06月03日
甲斐ワイナリー風間 聡一郎
6月。ブドウの花も咲き、新梢もぐんぐんと成長を遂げています。ブドウの花はとても可憐。優しく微かに甘く、白い花の香りをいたる所で感じることができます。
一般的には開花から約100日後が収穫の目安。毎日天気予報と睨めっこをしながら、観察と管理を続けていきます。
今年は若干のイレギュラーもあるものの、ここまでは概ね順調。病気の兆候はないか、圃場の仕事が遅れているところはないか、毎日全ての畑をまわって忙しい振りをしています。
私達の自社圃場では甲州、メルロー、バルベーラと三つの品種を栽培していて面積は130a。山梨で甲州は普通ですし、メルローもそこそこ多いです。しかしバルベーラを栽培している人はほとんどいません。
なぜバルベーラなのか。僕が自分のワイナリーに戻ってきた当初、自社畑は20aほどしかなく赤ワインの原料は海外のものに頼っていました。地場のブドウで赤ワインを造るために、自分の好きな品種、そして他にない独自性のある品種を植えることが事ができる環境があったので迷うことはありませんでした。
バルベーラは栽培適地なのか。バルベーラは北イタリア、ピエモンテで多く栽培されています。山梨とは違い冷涼な気候で土壌の性質も違います。
でも構わないんです。ワインは地場のものですし、僕は自分の生まれ育った土地で好きな品種を育て、好きなタイプのワインを造って売る。それが最もスマートなワイナリーの生き方だと思っているからです。
と、格好良く締めましたがバルベーラの栽培は本当に大変です。新梢は強く伸び、気がつくと畑はジャングルのようになります。近隣の方からは耕作放棄地の疑いをかけられることもしばしば。思い描くようにはなかなか進まないのが人生です。
著者について
甲斐ワイナリー
風間 聡一郎
伝統を活かしたワイン醸造を行う家族経営の甲斐ワイナリー3代目(酒造業としては7代目)。甲州種やメルロー、バルベーラなど専門品種を中心に個性と品位のあるワイン造りを目指し、日々、畑でワイナリーで作業に励む。時折息抜きにFBでぼやく。1978年生まれ。東京農業大学出身。