【第4回】 未来を切り拓くワイン技術者のオーストラリア研修記

シャトー・メルシャン 製造部製造課
牧野 修治


アデレード研修で訪問したワイナリーには、ワインの原料となるブドウの栽培において除草剤や化学肥料などを使用しない「自然派」と呼ばれるようなワインの造り手にも会う機会がありました。
特に印象に残ったワイナリーにOchota Barrels (オコタ・バレルズ)とNoon Winery(ヌーン・ワイナリー)があります。 

Ochota Barrels

Ochota Barrelsはアデレードヒルズに位置し、99%のグルナッシュに1%のゲヴェルツトラミネールをブレンドしたA Sense of Compression(センス・オブ・コンプレッション)や、日本人には馴染みのある北米系種のVitis labrusca(ヴィティス・ラブルスカ)系品種を使用したShe’s Lost Control Isabella(シーズ・ロスト・コントロール・イザベラ)などの個性的なワインを造っていました。
これらのワインは酵母添加をすることなく、ブドウに付着している野生酵母が発酵しやすいような環境・条件を整え、使用することでワイン醸造を行っていました。ワインメーカーのタラスさんはアデレード大学でワイン醸造を学び、また海外でのワイン醸造を数多く経験した知見があることでこのようなスタイルのワインづくりが出来ているのだと感じました。テイスティングしたA Sense of Compression 2015は柔軟かつ滑らかで果実味に富んだグルナッシュにゲヴェルツトラミネール由来のスパイシーさが見事にブレンドされたワインでした。

Noon Winery

一方、Noon Wineryはマクラーレンヴェールに位置するワイナリーです。
ワイナリー横に栽培されているスペイン品種のグラシアーノの畑を見学しましたが雨の少ないオーストラリアでも灌漑を行わず、また農薬散布などの使用も最小限にしたアプローチでブドウ栽培並びにワイン醸造を行っていました。
Noon WineryのEclipse(エクリプス)というグルナッシュ、シラー、グラシアーノのブレンドされたワインをはじめ、Noon Wineryで造られる全てのワインは荒々しさのない優しさに溢れたワインでした。
ワイナリーを去る際にワインメーカーのドリューさんと握手をしてきましたが、畑仕事をしている肉厚でゴツゴツした手からはワインが農産物であることを改めて感じさせられたと共にワイン同様の優しさが伝わる手でした。ワインの造り手の一人として、ワインからだけでなく手からも「想い」を伝えられるような造り手になりたいと強く感じました。

著者について

シャトー・メルシャン製造部製造課
牧野 修治

ワインメーカーの登竜門とされ世界でも屈指の栽培醸造学科カリフォルニア大学デイヴィス校ブドウ栽培醸造学科を2009年に卒業。
2012年4月にメルシャン株式会社シャトー・メルシャン勝沼ワイナリーに勤務。