【第5回】 フランス留学記 ― 農業と環境

マンズワイン
西畑 鉄平

フランスでもぶどうの有機栽培が全面積の8%(2013年末 情報源:Agence bio)を超えて来ているようです。スーパーにいけば必ずBIO(有機栽培)製品コーナーがあって、食料品から化粧品などあらゆるものをBIOで揃えることが可能です。
ワイン造りに関して言えば、味が変わる変わらないの他に、環境に対する負荷が違うし、利益の変化にもつながってくると思います。ボルドー大学の経営の先生などに言わせると有機栽培にすることによって、収穫量が減り、売値も高くなるので賢い消費者は選ばないし、その結果期待していたより利益が上がらない(高く売れない)生産者が多いということでした。
しかし、それはワインによって変わってくると思いますし、栽培者の技術によるところも大きいと感じます。
例えば、できるだけ安いワインを欲しい人に対してしか訴求できないワインであれば有機というよりも価格が重要だし、適切な収穫量が定められているフランスの規制の範囲内であれば、有機栽培でも十分な収穫量を保っている生産者もたくさんいます。
一方で環境に対する負荷という点では必ずしも有機栽培がすぐれているとは言えず、例えば多くの場合、慣行農法の生産者より多くの回数農薬散布をしているため、使用するガソリンの量も多くなるし、有機栽培に使われる農薬に含まれる銅や硫黄などは天然に存在する物質であるが無害ではないということも忘れてはいけないでしょう。
このテーマは議論の尽きないところですが、その結果、より環境に、人に優しい農業の方法を見つけ出していければ良いなと考えています。

著者について

マンズワイン
西畑 鉄平

山梨大学医学工学部総合教育部修士課程卒。ワイン科学研修センターで卒業論文、修士論文の研究に没頭後、キッコーマンに入社。マンズワイン勝沼と小諸の両ワイナリーに勤務。2013年よりフランスに留学、現在ボルドー市郊外に家族で滞在、ボルドー大学栽培醸造学部在学中。