醸造家のボルドー留学記 Vol.3

醸造家のボルドー留学記 vol.3
フランス ボルドー大学ISVV 留学記
 
留学期間:2017年夏~2020年8月
多田 淳様
所属:サッポロビール株式会社 グランポレール勝沼ワイナリー
 
 
 皆さんこんにちは。山梨はようやく春の訪れを感じられる季節となりました。今回から、ボルドー大学DNO課程在籍中に行ったシャトー研修について、数回に分けてご紹介いたします。
 
 前回ご説明した通り、本課程はワイン醸造(2年目は栽培も少々)に関するワイナリー研修が義務付けられています。私は1年目は、ボルドー右岸サンテミリオン第1特別級BのChâteau La Gaffelièreで3週間(9/17~10/5)、2年目は、著名なコンサルタントでありボルドー大学教授であった故Denis Dubourdieu氏所有ドメーヌ(ソーテルヌ格付け第2級Château Doisy Daëne、Château Reynon他)で6ヶ月(7/12~12/20)研修しました。
 
 
  
Château la GaffelièreとChâteau Doisy Daëne
 
 研修先は学生自ら見つけてくる必要がありました。同期や教授たちの話によりますと、DNO学生は2年目長期研修先からオファーを受け、卒業後そのまま入社するという例も少なくないようです。このため、格付けや有名なシャトーは研修先としても人気があるため、全国DNO学生からの希望が集中し、早々に研修生が決まります。私も2年目の研修先は、前年の12月にはコンタクトを取り始めました。
 一方、企業側も研修生は仕込時期の大事な即戦力として考えている事が多く、身元がはっきりしているDNO学生を積極的に受け入れている印象がありました。大学には、多くの中小生産者から研修生の求人情報が届いていました。日本から直接フランスの生産者に研修希望を出す場合、ボルドーに限らず、こういった背景があるという事を頭に入れたうえで、可能な限り早めにコンタクトをとられることをお勧めいたします。
 
 研修内容をお伝えする前に、研修を通じて知った日本とは異なる環境についてご紹介します。ワイン製造が一大産業として発展してきたボルドーでは、とにかく生産者のまわりに多くの関連企業や公共団体が存在するという事を肌で感じてきました。シャトー近隣には、果汁やワインを持っていくと一般分析を行ってくれる分析会社や、パッキン類やちょっとした機器や道具などを売っている雑貨屋等がありました。また、私のように大学等で専門的に勉強している学生に加えて、収穫や仕込作業に特化した専門派遣会社からのメンバー派遣など、ぶどう栽培やワイン醸造の知識をある程度備えた季節人員の確保ができるようになっていました。その他にも、コンサルタントが定期的にシャトーを訪問し醸造中のワインの品質確認や相談に乗ったり、移動式トレーラー上でびん詰めを行ってくれる委託業者があったりと、多種多様な繋がりやビジネスの形を学んできました。
 
研修中に見た多種多様な繋がりの例
 
 このような経験から、日本における今後のさらなるワイン市場拡大及び産業発展に向けて、自分に何ができるのかを常に考えながらワインづくりをしていきたいと決意を新たにした次第です。
 次回は、研修中の様子について更に具体的にお伝えしたいと思います。